小値賀で感じた「人との距離」。自分らしく島で暮らすために。

Profile
加山 恵里 (かやま えり)さん
福岡県出身。高校卒業後、保育士を目指して専門学校へ進学するも、進路を考える中で介護の道へ。20歳から約10年間、福岡で介護士として働く。2015年頃、小値賀町で暮らす現在の夫と出会い、結婚を機に小値賀へ移住。2人の子どもを育てながら、現在は夫の仕事を手伝うなど、島での暮らしを続けている。
福岡から小値賀へ。結婚をきっかけに始まった島暮らし

福岡生まれ、福岡育ち。加山さんにとって、小値賀はもともと「住んでみたい場所」ではなかった。
高校卒業後は、憧れていた保育士を目指していたが、進路を考える中で「子どもは減って、高齢者が増えていく」と聞き、介護の道へ進むことに。20歳から結婚するまでの約10年間、福岡で介護士として働いた。
そんな生活が変わったきっかけは、現在の夫・加山幸次さんとの出会いだった。小値賀に住みながら毎週のように福岡へ通っていた夫と福岡で出会い、交際が始まると、結婚を前提に話が進んでいった。
「もう30だってなって。そんなちんたらとお付き合いしてられないよってなって」
結婚するか、別れるか。そんな話から始まった二人の関係は、あっという間に進んでいった。
仕事を辞め、小値賀と福岡を行き来しながら結婚式の準備を進め、夫の家も改修。結婚式は島と福岡の中間ということでハウステンボスで挙げ、その後、小値賀での暮らしが始まった。
しかし、初めて小値賀に来たときの印象は、決して明るいものではなかった。
「ワクワク感? ないよ。怖かった」
福岡で暮らしてきた加山さんにとって、小値賀は何もかもが未知の場所。夜に喉が渇いたらどうするのかと聞けば、「24時間営業は自動販売機」と言われた。道もなかなか覚えられず、10年近く暮らした今でも、細い道では迷うことがあるという。
そんな加山さんの小値賀での暮らしは、結婚をきっかけに始まり、やがて2人の子どもを育てる日々へとつながっていった。
「よう来たね」の裏側で。移住者として感じた、人との距離
そして10年が経った今も、「ずっと慣れた」とは思っていない。
むしろ、慣れないものは慣れないままでいい。そうやって自分なりの距離を保つことが、島で暮らし続ける一つの方法になっている。
一方で、今になって振り返ると、最初に「近すぎる」と感じていた人との距離に、支えられてきたことにも気づく。
「なんでみんな私のことを聞いてくるんだろう」と悩んでいたけれど、周りの人たちが気にかけてくれていたからこそ、困ったときには悩みを相談することができた。子育てや暮らしの中で困ったときも、誰かが声をかけてくれたり、話を聞いてくれたり。そうした積み重ねが、少しずつ小値賀での暮らしを支えてくれた。
「今思えば、気にしてくれとったんやろうね」
最初は戸惑っていた島の人との距離も、10年という時間の中で、少しずつ意味が変わっていった。
すべてを受け入れなくてもいい。無理に島に合わせなくてもいい。それでも、困ったときに頼れる人がいる。そんな人とのつながりがあるからこそ、自分らしい距離感を保ちながら、小値賀で暮らし続けることができている。
「怖かった」と感じていた小値賀での暮らしは、いつの間にか、人とのつながりに支えられた日常へと変わっていた。
人を元気にする笑顔。島で見つけた、自分らしい楽しみ方
加山さんは現在、夫が営む建設会社「友建設」の仕事を手伝いながら、グループ会社であるガス会社「株式会社MIYABI」の業務にも携わっている。
島の人たちが日常的に利用するガソリンスタンドでは、給油に訪れた人と笑顔で言葉を交わす。朝から明るく迎えてくれる加山さんとの会話を楽しみに、スタンドを訪れる人も少なくない。
「八方美人だからね」
加山さん自身は、誰とでも話せる自分をそんなふうに表現する。けれど、その笑顔や明るさは、単に「誰とでも仲良くできる」というだけではない。そこにいる人を自然と笑顔にして、元気を与えている。
夫の会社を手伝いながら、ガソリンスタンドで島の人たちと日々顔を合わせる。そうした仕事を通して、加山さんもまた、小値賀の暮らしの中に自然と溶け込んできた。
そして、加山さんの「楽しむ力」が表れているのが、祭りで参加した「おぢか女子みこし(通称:ギャル神輿)」だ。もともとテレビで見て、いつかやってみたいと思っていたというギャルみこし。小値賀で参加できると知ると、
「ギャルみこし、可愛くない?」と、迷わず参加を決めた。
普段の生活とは少し違うことでも、「楽しそう」「やってみたい」と思ったら飛び込んでみる。そんな加山さんの姿は、周りの人まで楽しい気持ちにさせてくれる。
小値賀での10年の中で、仕事も、子育ても、地域でのさまざまな出来事も経験してきた加山さん。
今では、夫の仕事を支えながら、MIYABIで島の人たちと笑い合い、祭りでは思い切り楽しむ。特別なことではなくても、日々の何気ない出会いや、自分が「楽しい」と思える瞬間を大切にしている。
加山さんの明るい笑顔は、今日も小値賀のどこかで、誰かに元気を届けている。







