町でたった一人のケアマネとして――島の暮らしを支え続ける

Profile

江川 勉 (えがわ つとむ )さん

 小値賀町出身。高校卒業後、公務員試験に落ちたことをきっかけに、当時の町長の紹介で社会福祉協議会(社協)に入職。以来40年以上にわたり、小値賀町の福祉の最前線で活動を続ける。事務局長として組織運営を担う傍ら、交通弱者のための福祉有償運送事業を立ち上げるなど、地域課題の解決に尽力。現在は、後進の育成にも力を注いでいる。

消防士の夢から一転、飛び込んだ福祉の世界

高校時代まで、江川さんが抱いていた夢は消防士になることだった。しかし、部活動の柔道で感じていた身体の異変は、頸椎の病気が原因だと後にわかった。「握力がないから(相手の道着を)握れなかったり、足に力が入らず、走っている時にガクンとするんですよ」。身体の異変は夢を諦めるには十分な理由だった。

目標を公務員に切り替えるも、試験は不合格。島を出ることも考えていた矢先、当時の町長から「こういう仕事もあるよ」と声をかけられたのが、社会福祉協議会(社協)との出会いだった。

「それこそ高卒で、何にも知らない状態で入ったね」。

昭和60年、正規職員わずか4名、事務所は役場の一角という環境で、江川さんのキャリアは始まった。入職後すぐに先輩が退職し、自身もまだ20代前半の「ペーペー」でありながら、新人指導と組織運営の主軸を担うことになった。右も左も分からぬまま、目の前の仕事に必死で食らいつく日々。それは、小値賀の福祉の土台をゼロから築き上げていく道のりの始まりでもあった。

深刻な人材不足と「悪循環」の中で見出す光

事務局長として社協を率いる江川さんが今、最も大きな課題として挙げるのが「人材不足」だ。職員の高齢化が進む一方で、若手がなかなか定着せず、組織は常に人手不足という「悪循環」に陥っている。

「職員はですね、はい、あの、常に募集かけてる状況にはなってる感じですね」。

理想は、職員を外部の研修に行かせるなどして新しい知識や視点を取り入れること。しかし、「人数が足りないから行けない」のが現実だ。この「井の中の蛙」状態に、江川さんは強い危機感を抱いている。

それでも、彼の視線は常に地域住民へと向いている。地域のお年寄りや子どもたちが喜んでくれる姿こそが、この仕事を続ける原動力だ。

「お年寄りも子供たちも喜んでくれることって幸せじゃないですか。それが福祉かなって思ってるので」。

困難な状況だからと立ち止まるのではなく、今できることに全力を尽くす。その誠実な姿勢が、40年という長い間、町の福祉を支え続けてきた。

「難しい仕事じゃない」だからこそ、飛び込んできてほしい

定年を目前に控え、江川さんは未来の小値賀を担う世代へ、温かいメッセージを送る。「福祉の仕事は、特別な資格や技能がなければできない難しいものではない」と彼は言う。

元々は家族が当たり前に行ってきた、誰かを思いやる行為が福祉の本質であり、専門的な知識は後からでも身につけられる。だからこそ、「ハードルが高いとかじゃなく、福祉の世界へ飛び込んできてほしいなっていうのはあるね」と、新たな仲間が現れることへの期待を語る。

もちろん、一つのやり方がうまくいかないこともある。しかし、彼は決して諦めない。

「(山の頂上という)目標がここにあったらどっからでも登れるんだから。それこそ寄り道してもいいんだから」。

目指すべき場所が明確であれば、そこへ至る道は一つではない。江川さんが築き上げてきた福祉の土台を受け継ぎ、新しい道を描いていくのは、これからを生きる私たち一人ひとりなのかもしれない。


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